これが私です。ポール・スミス展

仕事部屋
展示会場−1

上野の森美術館で開催された「ポール・スミス展」に行ってきました。
ポール・スミスは言うまでもなく、
イギリスを代表するファッションデザイナーです。
そのデザイン傾向がすぐに思い浮かばないとしても、
同名のブランドのシグネチャーデザインとも言える、
マルチカラーのストライプをモチーフにした財布などのファッション小物は、
日本でもポピュラーなアイテムではないでしょうか?
ポール・スミスは70年代中期に、イギリス中部の都市、
ノッティンガムに小さな小さなセレクトショップをオープンしました。
徐々にオリジナルを作りはじめて人気を博し、
80年代には東京やニューヨークにも進出しました。
伝統的な英国スタイルのジャケットで、
裾部分が異素材に切り替えてあったり、
身頃や袖全体に大胆な花模様の刺繍が施されていたりと言った、
彼ならではのスタイルで注目を集め急速に売上を伸ばして行きました。
その世界的な活躍を評価されて94年にはエリザベス女王から勲章を授与され、
さらに97年には若きブレア首相のスーツを担当、
当時世界中の若者に影響を与えたイギリスのアートやデザイン、
音楽などを総称したクール・ブリタニアムーブメントの立役者でもあります。
現在は日本のビジネスマンにも愛用されるブランドだけに、
花柄や写真プリントもスーツの表地ではなく裏地に使われている状態ですが、
遊び心はそのままという気がします。

そんなポール・スミスは、コレクターとしても知られています。
今回のポール・スミス展は、コレクションも少しは展示されていますが、
メインは彼が集めた絵画やポスターはじめ、腕時計、自転車、
日本の食品サンプル(おなじみのフォークが宙に浮いているスパゲッティ)
ほかさまざまなアイテム。
中には、彼のコレクション好きを知っているファンたちが、
郵便で送ったモノまで切手を貼られたままで展示。
インドぽい象の置物や怪獣、夜店にありそうなビニールのイカ、
ボーリングのピン、コオロギやバッタの置物、などなど。
絵画は泰西名画と言ったものから50〜60年代のポップな様式で描かれた、
スタイル画ぽいもの、本人やほかの人が撮った写真、
モダンアート的なものから子どもの落書き、広告、雑誌の切り抜き、
海外のおみやげの包装紙などなど、
もう本当に種々雑多なものが額装されて展示されています。
物集めっぷりに共感を覚えつつ、
さぞや保管場所に苦労されているのでは? と、そこにも共感。
また、再現されている彼のオフィスもモノだらけ。
今、日本の一部ナチュラル志向派の間では空前の
「モノを持たない暮らし」ブームですが、
そのムーブメントに乗りきれないモノマニアな私としては、
「おお、同志よ!!」という心境で見せていただきました。
彼の仕事部屋に続いて再現されているアトリエで、
スタッフが使っているパソコンは最新のMACですが、
ポールの仕事場に置いてあるのは初代 iMAC。
90年代後期に登場したオールインワン型パーソナルコンピューターで、
曲線を活かしたデザインとブルーやオレンジなどの
カラフルなカラリングで一世を風靡した名機です。
我が家の押入れにもまだあり、
手放すことが出来ないのはポールと同じですが、
まさか、これ、現役で使っているわけじゃないよね?
とにかく、見ていて楽しい展示会です。
タイトルの「HELLO! MY NAME IS PAUL SMITH」というのも、
いかにも彼らしいと思います。
彼はパーティーや何かの集まりに出向くと、世界的なデザイナーであるのに、
無名の若者や誰だかわからない人にも自分から気さくに話しかけて
「HELLO! MY NAME IS PAUL SMITH,I’m a fashion designer」と、
自己紹介をするのだそうです。
そして思い出すのは、2011年3月のこと。
東日本大震災後の原発事故の問題から、観光客はじめ外国人の方々が、
東日本エリアから続々脱出、関西や国外へと避難して行きました。
来日を中止したアーティストもたくさんいました。
その中でポール・スミスは急遽来日し、
日本国内のブリティッシュ・カウンシルの責任者と
you-tubeに動画をアップ。
「日本は安全です。変わらず躍動しています。
日本でのビジネスを考えていた方、
今こそぜひ、日本に来てください!」
と声明を発表。日本のためにひと肌脱いだ形ですが、
これも彼一流のビジネスセンスなのでしょう。
モノと人をこよなく愛する、その情熱でビジネスを進めていく。
そのスタイルが多くの人を惹きつける要因だと思います。
そういえば、you-tubeに登場したときの第一声も、
「HELLO! MY NAME IS PAUL SMITH,I’m a fashion designer」
だったと思います。
数年前、日本版エル・デコとのコラボ企画で、
ポールが表参道の彼のショップ「SPACE」のギャラリーに、
椅子を展示したことがありました。
これは、ロンドン近郊の街に住む人々を、服の違いで特徴づけ、
それを椅子にデコレーションして展示するという試み。
たとえば、メイフェアという高級住宅街に住む老夫婦、
イーストエンドという、かつての低所得者居住地が
今や注目のサブカルエリアになっている街に住む若いカップル、
あるいは、郊外で子育て中の若い夫婦の4人家族などなど、
それらしい服やアクセサリーをまとった椅子が、
それぞれの地域のライフスタイルを表していて、
とてもおもしろい企画でした。
その時私は編集部から、それぞれの椅子が表す人たちに、
ストーリーをつけて欲しいと頼まれました。
たとえばイーストエンドの若いカップルなら、
夜な夜なクラブに行って、酔っ払って喧嘩になり、
彼女の方が彼氏を蹴飛ばす、というような物語を書き、
それぞれのストーリーをプリントしたパネルが、
椅子とともに展示されました。
この企画からもわかるように、彼は地域の持つ違いや特性を
とても大事にする人です。
今回の展示会には世界中で展開している、
ポール・スミスショップの写真も展示されていますが、
それを見ると国や街の個性に合わせて、
外観や内装が変えられていることに驚かされます。
ロンドンのあるショップはいかにも伝統的な
ブリティッシュなたたずまいで、
パリ、サンフランシスコ、ローマなども、それぞれ、
その街の個性や魅力を反映したショップになっています。
京都のショップは古民家を使っていたり。
直営ショップは世界共通の外観やインテリアで統一するブランドが多い中、
地域に溶け込む店作りを推進する、いわば郷に入れば郷に従え方式の、
それがポールの個性なのだと思います。
それぞれの違いを尊重しながら、それを自分のパワーや魅力に加えていく。
集めまくったほかの人達の作品で自らを表してしまう。
「Hell!I’m Paul Smith」
そして私はこれらすべてです。
と言わんばかりの、とても刺激的な内容でした。
この展覧会は世界を巡業していて、東京は京都に続き開催、
このあと名古屋に行くそうです。

館内は撮影自由なので、入場者はほとんど全員撮影していました。
写真上は、再現されたポールのオフィイス。
ポップでキッチュ、永遠の子ども部屋テイストと、
日本のアンティークの箪笥のミックス&マッチが印象的。
写真下は、彼が集めた絵画や写真のコレクション。この壁面が延々続きます。

活躍するユニフォーム

暑い日々が続いております。
気温的にもオリンピック的にも。
ニッポンのメダルラッシュも勢いに乗っていて、
90年ぶりだの30年ぶりだの、歴史を塗り替える勝利の連続です。

リオが開幕する前は、現地の準備不足や、
反対派の「地獄へようこそ」のプラカードや、
デモ隊が聖火を打ち消してしまうなどの
数々のアンチな事件が報道されていました。
2020の開催を待つ東京でも、決定時のお祭気分はどこへやら、
競技場やロゴの白紙撤回を経て、国民の間でシラケムードが高まっていた矢先。
リオの開会式を見たとたん、やっぱりオリンピックのチカラってすごいなあと
実感させられました。
南米初の五輪開催ということで、
それが決まったときは好景気の上り調子だったブラジル。
ところがその後バブルが弾けて、今、五輪開催どころではないという状況に。
そんな中、当初より大幅に予算が削られたというのに、
サンバのミュージシャンやストリートパフォーマーが
広い会場で圧巻のパフォーマンスを見せてくれたし、
国の歴史を振り返るストーリーの演出も見応えありました。
低予算でもアイデアと想像力さえあればこんな素晴らしいことができると
改めて納得。
そしてはじまった選手入場。
何がすごいって、世界、205の国と地域が参加して、
それが一堂に介してパレードするわけで、そんなイベントはやはり五輪のみ。
各国の「いついつ独立しました」とか「国名が変わりました」とかの豆知識も
同時に知ることができて楽しい限りです。
そしてこのコラム恒例のオリンピック開会式選手団ユニフォームレポですが。
全体的な印象として、今年はモード的にチャレンジしている国が、
多かったように思います。
まずカナダ。背中に同国のシンボルでもあるカエデの葉のモチーフを
大胆にあしらった赤いジャケット。
その下には白いTシャツを合わせているのですが、
シャツのすそは後ろがタキシード風につばめの羽根のように先が割れていて、
さらにジャケットより長いのですそから出る仕組み。
ボトムは細身のネイビーのパンツで、そのスタイリングはどことなく、
あのお騒がせミュージシャンのジャスティン・ビーバーを思わせるイメージ。
確かにカナダはジャスティンの故郷なのでした。
次に印象的だったのがUSA。
例年通り、ラルフ・ローレンのプロデュースということで、
ネイビーのジャケットにトリコロールの太いストライプTシャツに
ホワイトジーンズ(一部ブルージーンズ軍団も)、
トリコロールカラーのデッキシューズというスタイリング。
オリンピックの選手団入場行進というより、
GAPの広告かと思えるカジュアルスマートさでした。
(GAPは広告モデルに個性的な風貌の一般人ぽい人を使うのでなおさら)
しかも、メンズもレディースもボトムはパンツで、ユニセックスがコンセプト。
オリンピックといえば、スポーツウェア風のユニフォーム以外は、
男子はパンツ、女子はスカートが主流。
民族衣装風のユニフォームも同じように、男女の差があるスタイル。
そんな中、今回はUSAはじめ、いくつかの国で、
ユニセックスなユニフォームが採用されたのが印象的でした。
そして昨年に引き続き、ステラ・マッカートニーのプロデュースによる
英国選手団のユニフォームは、
男子が淡いブルー系のボタンダウンシャツにネイビーのピーコート風ジャケット、
白い短パン。
女子が白いサファリジャケット風の下にネイビーの箱ひだ風ミニスカート。
こちらも一見GAP風カジュアルテイストでした。
一方、モードを意識したハイブランド風ユニフォームだったのがモナコ。
白いシャツにネイビーのネクタイ、
エンブレム付きネイビーのブレザーにカーキがかったベージュのパンツ、
黒い革靴と、徹底したダンディースタイル。
イタリーもまたファッション雑誌の広告風で、
さすがは御大、アルマーニによるもの。
濃紺でバギー風太いパンツのオールインワン。
こちらもユニセックスでした。
変わり種では、一部の海外メディアに
「ハリーポッターの魔法学校の制服みたい」と評された、
モンテネグロ女子のワンピースとジャケットのユニフォーム。
サックスブルーという色やミニのフレアスカートにカンカン帽というキュートさ。
かわいい割にどんな体型と顔つきの女子でもカバーできる
制服ならではの汎用性があるのも魅力です。
ともあれ、開催国のブラジルもトロピカルなプリントのシャツやブラウスを採用し、
ファッショナブルに仕上げていたというのに。

どうしたニッポン!!

赤いジャケットに白いパンツ。そしてそのシルエットや全体の仕上げは……。
え?前回の東京オリンピックのときの使いまわし?
というくらいのレトロ感漂うユニフォームでした。
なんでコレ?
日本って、一応、まだ、先進国ですよね?
クールジャパンというキャッチコピーもあり、
ファッション先進国でもある、その国のユニフォームがコレ?
この後ろ向きかつ保守的なユニフォームに、
今の日本の関係各所のリーダーたちの自信のなさが見えているようで、
少し寂しくなりました。
「変なデザインにして叩かれたくない」という思いが見え隠れします。
じゃあ、変なのにしなければいいのに、とも思いますが、
でも、それをジャッジすることも難しく、
どうしても中庸なものに流れてしまうのかも知れません。

それにしても、ロンドンオリンピックからもう
4年も経っていたことにも驚きます。
とすれば東京オリンピックももすぐそこ。
今年の日本の選手たちの大活躍のように、
4年後の開会式の演出や、
ユニフォームが大活躍してくれることを祈る次第です。

夏のスタイリングに最強シャツ登場!

今年の夏は数年ぶりの猛暑の気配。
7月に入ったばかりなのに、全国的に30度超えの真夏日が続きました。
立っているだけで汗がダラダラ吹き出てくる、
こんな季節には半袖のシャツさえ生地を選んでしまいます。
綿や麻といった素材でも、少し厚手だと風が通りにくくなり、
体の熱気が生地との間にとどまってしまうような感覚。
ですからこの時期は綿や麻でもついつい、
長年着た洗いざらしの、風通しのよい素材のものを選んでしまいます。
とはいえ、ビジネスシーンなどでは、
洗いざらしというわけにも行きません。
そんなときにおすすめなのがカットソー素材のシャツです。
目の詰まった布帛(布地)のシャツより、だいぶ涼しく感じられます。
とくにおすすめなのが鹿の子素材のポロシャツ。
元々はスポーツのポロをプレイするときのウェアとして生まれたと言われ、
乗馬してボールを操る選手がロゴデザインになっているブランドがあるのはそのため。

現在はテニス選手のウェアになっていたり、
昨今の省エネ・クールビズ時代ではビジネスシーンで着用している人も多いと思います。

とはいえ、衿や袖口がリブ(ゴム)編みのポロの場合、
どうしてもスポーツウェア的なカジュアル感が出すぎてしまいます。
その点をクリアして、きちんとした印象を醸し出せるのがドレスポロの存在です。
ポロシャツと同じ鹿の子素材を使っているので、通気性や伸縮性もよく、
汗をかいても布帛(布地)のように肌に密着することもありません。
それでいながら、通常のポロとドレスポロが大きく違う点が前立て部分にあります。
土井縫工所から7/7に販売開始されたばかりの新作ドレスポロは、
裏前立仕様にすることで、フロントがすっきり。
襟元がきちんとした感じに見えるのでビジネスシーンにもすんなり。
襟もボテッとした感じになるのを避けるために芯をなくし薄くて繊細な仕上りに。
さらに、スリットのないスクエア形状のボトムにすることでドレス感が増しています。
素材はクールマックスの鹿の子(コットン×ポリエステル)を使用。
これは通気性がよいため、汗を吸収しやすく速攻で乾くという、
ニッポンの夏には心底うれしい素材とアイテムです。
1日着ていても汗のベトつきが気にならず、さらさら感覚が持続。
着ている本人はもちろん、まわりの人にも好印象を持ってもらえそうです。

さらにもう1点、土井縫工所のドレスポロが普通のポロシャツと異なる点は?
ボディサイズがタイト!
これまでポロシャツというと、身頃がもさっとしているタイプが多かったので、
それで避けていたという人も多いはず。
このドレスシャツならスッキリスマートなスタイリングが可能になります。

チノパンやコットンパンツと合わせた王道スタイルのほか、
少しヒップボーン気味で細身のボトムと合わせた今風なスタイルもおすすめ。
あえてシャリ感のある麻や光沢感のある素材のボトムを持ってきて、
よりスタイリッシュに仕上げるのも楽しそうです。
ジャケットを合わせるなら、細身のイタリアンで。
色々使えて、しかも猛暑も気にならない。
この夏の最強アイテムと言えそうです。

http://www.doihks.jp/product/entry/polo.html

夏はクール&スタイリッシュに

蒸し暑い日が続きますね。
もはやセミトロピカルともいわれる日本列島は、
これから夏に向けて「ファッション制限」がかかってくる状態。
おしゃれ感やTPOを外さない程度に、
気候風土に合わせたスタイリングを考えていきたいものです。

そんなスーパーウエット&ホットな日本の夏に、近頃印象的なのが、カジュアル過ぎないショートパンツのスタイリングです。
ショーパンすなわち「短パン」というと、どうしてもラフな普段着や、
あるいはリゾート感満載になってしまいがち。
でも、最近印象的なのが、Tシャツや、
ラフなカジュアルシャツを合わせるのではなく、
きちんとした感じのドレスシャツを合わせている男子の姿です。
たとえば、ロンドンストライプのシャツに白いコットンのショートパンツを合わせ、
バックスキンのローファーなどというスタイリング。
この際、シャツはパンツにインして比較的上質な革ベルトをしたいところ。
ベルトと革靴の色目を揃えるとスッキリします。
あるいはショートパンツ×ドレスシャツにボウタイを締めるのも今年風。
サックスブルーなどの無地のシャツのほうがボウタイを合わせやすいかも。
比較的タイト気味なパンツのほうがボウタイとの相性がよさそうです。
パンツはカットしたジーンズなど思い切りラフなアイテムにして、
あえてシャツをパンツの外に出し、
靴下をきちんと履いて靴紐のある革靴を合わせる。
カットジーンズ以外のアイテムをきちんとしたもので揃えることで、
ミックス&マッチなスタイリングが楽しめます。
さて、やはり今年のトレンドとして注目したいのがショートパンツのスーツ。
ジャケットとボトムをおそろいにすることで、
ショーパンなのにきちんと感は満載。
白いシャツにジャケット&ショートパンツ。
グレーやネイビーブルーなどのフォーマル感のある色目を選ぶといいかも。
ポイントはジャケットのシルエット。
細身で二つボタンなどを選ぶと、
だらしない感じになるのを防げそうです。
襟周りにコットンのスカーフを合わせてもおしゃれですね。
汗ばむ季節は薄いコットンスカーフが首回りに流れる汗を吸い取ってくれるので、
おしゃれかつ清涼感も増します。
もちろん、靴は通常スーツ着用時に合わせるアイテムで。

このように近頃のショートパンツスタイルは、
カジュアルテイストでもリゾートスタイルでもなく、
通常のパンツスタイルの丈が短くなっただけという感覚でトライしてみてください。

バッグもしっかりした仕立ての革やナイロン素材の、
トートバッグやスタイリッシュなビジネスバッグなど、
あくまでも通常モードのアイテムを持って来るのがおすすめ。

もちろん、遊び心も味わえるのがショートパンツの魅力です。
クールビズと言ってもショートパンツはNGというケースがほとんどでしょうか?
週末のプライベートで楽しんでみてください。
真夏のスタイリングは涼しくおしゃれに。

装うことの迫力

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東京駅近辺での取材の帰り、ちょうどいいので前から行きたかった
「PARIS オートクチュール ー 世界にひとつだけの服」展を観てきました。
会場の三菱一号館美術館は旧三菱銀行のレンガ作りの建物を復元した、
クラシカルなビルの中にあります。
入り口は緑が茂った中庭に面していて、そこはカフェもある優雅なスペース。
数年前に行ったときよりだいぶ樹木が成長していて、
ますますロンドンの一角というたたずまいになっていました。

展覧会の公式HPに掲載された「見どころ」によれば、
「19世紀後半のパリで誕生したオートクチュール(Haute=「高い」「高級」
・Couture=「縫製」「仕立て」の意)は、パリ・クチュール組合の承認する
数少ないブランドにより、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる
高級服として知られています。
〜中略〜
本展はオートクチュールの始まりから現代に至る歴史を概観するもので、
〜中略〜
時代を映し出す美しいシルエットの数々、刺繍・羽根細工・コサージュなど
脈々と受け継がれる世界最高峰の職人技を、
ドレス、小物、デザイン画、写真など合わせて
およそ130点によりご紹介します」とのこと。
オートクチュールの誕生は意外に新しく19世紀後半。
元祖は英国出身のデザイナー、ウォルト(1825-1895)。
彼が、年2回のコレクション発表や、
服にデザイナーの名入りタグを縫い付けるなど、
オートクチュールの基礎を作ったと言われます。
ウォルトの時代は王侯貴族や富裕層のマダムたちが顧客。
その彼の1898年頃の華麗なイブニング・ケープを皮切りに、
知っている名前だけでもポール・ポワレやシャネル、スキャパレリ、
イヴ・サンローラン、バレンシアガ、ピエール・カルダン、
クリスチャン・ディオール、ジヴァンシィ、クレージュ、パコ・ラバンヌ、
ジャン=ポール・ゴルチエ、クリスチャン・ラクロワ、ウンガロ、アライア
などのデザイナーの豪華絢爛なドレスが続き、
2014年のラフ・シモンズのドレスで閉じてあります。
夜会用のドレスに混じって「室内着」や「イブニングコート」というのも
多数展示されているのですが、
どれもみな億万長者のマダムたちのために、
これでもかと贅を凝らしたものばかりで、
デザインうんぬんというより、素材にどれだけ手間暇かけているかという
素材合戦の様相を呈しています。
(デザインに関してはシャネル、バレンシアガ、スキャパレリなんかが、
さりげなくもドレスそのものが息をしているようなデザインで、
さすがにすごい人たちなんだと)
ドレス全面のビーズ刺しゅうや、シルクで象ったモチーフを
アップリケ状に縫い止めてあるもの、
布地を幾重にも寄せてドレープを形作ったものや、
ラインストーン、羽根などを全面に縫い止めてあるもの。
手練手管のオンパレード、職人さんたちの腕の見せどころ満載なのです。
世界にひとつだけの服を作るために、
デザイナーと職人とマダムたちの財力とが三つ巴になって、
これでもかとパワーを競い合う、モードの戦いなのだと思いました。
表面的には美しくてゴージャスでエレガントでありながら、
三者の情熱や意地が火花を散らして、
その炎がビーズや羽根飾りを深く力強く輝かせているような。
だからこそ、こうして戦火やらなんやらを生き延びて、
100年後のアジアの小都市で艶やかな姿を披露できているのだ、
それだけの魂がそこにあると、しみじみ思わされました。
装うことの執念ともいうべきその精神。
それが形になったものを次々に目撃しながら、
今さらながら迫力ある装いのカッコよさに心打たれ。
いつからか人類は生きることの意味や形を、
装うことで表してきたはず。
鎧や甲が美しいのはそのせいだと思うし、
今だって私たちは勝負服と言って、
いざというときには自分を一番美しく魅力的に、
一番強く理知的に見せてくれる服を選ぶではないか。
はっきり言葉にして意識しないまでも、人はそんな時、
多かれ少なかれ装うことに全神経を注ぐはず。
そしてそんな時に選ばれるのは、オートクチュールとは言わないまでも、
できる限り仕立てや作りのいい高級服ではなかったか?
そんな風習に静かに風穴を開けたのが、
アップルの元CEO、スティーブ・ジョブスでした。
彼は自社の新製品発表会という重要かつ社運を賭けたハレの場に、
いつも黒いタートルネックにジーンズで挑みました。
それが斬新だったから、以来、IT系や家電会社の発表会では、
Tシャツにジーンズ、あるいはクールビズのシーズンでもないのに、
ノーネクタイのスーツ姿で挑むトップが現れました。
なんか、スタイリストとか回りから
「社長、今はこうなんですよお!」と言われてやってる感満載で、
あんまりカッコよくないなあと思います。
スティーブ・ジョブスのは、あれが勝負服だから。
あの人のポリシーの根底にあるのは禅らしいですから。
まったく同じ黒いタートルやTシャツを何枚も持っているらしいし。
ストイックな人がそれを表しているからこそ、
黒タートル&ジーンズがカッコいいわけで。
装うことは自分の生き方の表明。
ドレスアップにしろダウンにしろ、
「私はこんなやつです」というのが自覚の元に表わている人は
カッコいいなあと思います。
そんなこんなで、服作りや着ることに命を賭けていた時代や仕事ぶりを
見ながら「古き佳き時代」という言葉が思い浮かびました。

とはいえ、シャネル・スーツで300万程度と言われ、
贅をこらしたドレスなら天井知らずなオートクチュール。
欧米の大統領夫人や皇太子妃でさえプレタポルテ程度のドレスに身を包む昨今、富裕層の顧客が年々減っているらしく、業界はただいま衰退中。
コレクションごとに注文する顧客は一説によると全世界で約500人程度とのこと。
クリスチャン・ラクロワのような天才デザイナーのメゾンでさえ、
オートクチュール部門は休業中です。
ラクロワはじめ、現存のデザイナーはプレタポルテや香水、
ライセンス契約などが主な収入源と言われています。
そのプレタポルテでさえ、今はファストファッションに押されて苦しい。
激安アパレルショップを見ると、服たちがみんな乱雑に吊り下げられ、
買われる前からみすぼらしさが漂っていて、
燃えるゴミ行きの一時保管倉庫という感じがします。
100年経っても生き残っていそうな魂は感じられない。
やっぱり、ていねいに作られた服を着て暮らしていたいものです。

とにかく、ひさしぶりに服のチカラを見せてもらった展覧会でした。
とはいえ、展覧されたドレスを眺めながら、
室内着でさえ「コレで部屋にいるの?家でも疲れそう」という感想や、
イブニングコートにいたっては背後や幅のボリュームがすごくて、
こんばんわ、と来られても拙宅ではまず玄関から入れそうもなく、
いきなりマダムを門前払いしてしまいそう。
と、内心下世話なツッコミをしながら見るのも楽しい。
GW中はいつもより少し混むかもですが、
丸の内近辺におでかけの方にはおすすめです。

*写真は、会場の入り口前、中庭を美術館上階から見たもの、
そしてミュージアムショップで購入のラクロワのノート。
ココロわしづかみでしたわ。
(横向きのものはクリックすると正しい位置に回転します)

「PARIS オートクチュール—世界に一つだけの服」
〜5/22(日)まで開催中。
10:00~18:00(祝日を除く金曜、会期最終週平日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
月曜休館(但し、祝日と5/2、16は開館)
三菱一号館美術館   当日券 1,700円
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
アクセス/JR・東京駅徒歩5分、有楽町駅徒歩6分
東京メトロ・千代田線二重橋前駅徒歩3分、有楽町線有楽町駅徒歩6分、丸の内線東京駅徒歩6分
都営三田線日比谷駅徒歩3分

桜の季節のAI育て

春です!
桜前線北上中で、日増しに景色が華やかになります。
新入社員の皆さまは慣れないスーツで、
まだ緊張の日々をお過ごしでしょうか?
もしレギュラーカラーのシャツを着ているのだとしたら、
セミワイドカラーのシャツに着替えてみては?
首回りが少しスッキリ見えて、
気持ちまでリラックスしてくるかも知れません。

さて、近頃、チマタを騒がせているAIの存在。
人工知能 “Artificial Intelligence”です。
「AI、世界第一位の棋士に勝利」とか、
「AI、創作の小説が星新一賞の一次審査合格」とか、
「AI、ヒットラーは正しいと発言して緊急停止」とか、
連日、そんなニュースが報じられています。
AIといえば思い浮かぶのが 2001年公開の米SF映画「A.I.」。
これは家族の一員としてレンタルされている少年型ロボットが主人公で、
人類に役立つよう開発された道具であるにもかかわらず、
というか、だからこそヒトを愛する心を持つように
プログラミングされてしまったロボットの、
切なくやるせない物語でハンカチ必携の映画でした。
で、こんな風に優しい心を持てれば人類にとって問題はないのですが、
一方、1968年公開のSF映画「2001年宇宙の旅」には
全知全能意識を持ってしまって人類を支配しようとするAIが登場します。
HALと名付けられたそのコンピューターは宇宙船に搭載されています。
形は機械ですが、ヒトと会話することができ、
ヒトは会話しながらコンピューターを操作するシステム。
宇宙の旅が進むうち、プログラムのミスか何かでHALは野心を抱きはじめ、
自分の敵とみなす乗り組員を抹殺したりする。
主人公がHALの故障や悪事に気づいて電源を切りシャットダウンするとき、
HALはその人物から以前教えてもらった歌を歌い出す。
つまり情にすがろうというわけで実に人間的です。
「ヒットラーは……」と発言して停止されてしまったAIのTayや、
あのペッパーくんも、
ヒトと交流することによって言葉を覚えて開発されて行くシステムとのこと。
だから、教えるヒトが悪意を持って悪い言葉や邪悪な思想をふきこめば、
どんどん悪に染まって行くのです。
これまた極めて人間ぽいです。
今、人類はヨチヨチ歩きのAIを育児している時期なのかも。
子育てならぬAI育て。
ここで間違うととんでもない結果になってしまうんですね。

チェスや碁の世界一の人に勝ったというのは、
文学でいうとノーベル文学賞をとったレベルです。
一方小説の賞の一次審査に通ったというのは、
ちょっと文章作りがうまい人で運が良ければ比較的簡単なので、
こちらはまだまだ発展途上。コラムニストはまだ安泰かも知れません。

とはいえ、今から30年後には2045年問題が控えています。
これは、優秀なAIがさらに優秀なAIを作り、
さらにそいつが優秀なAIを作り、ネズミ算式に優秀なAI作りを続けて行くと、
やがて人類にはコントロールできないレベルのAIが生まれてしまう。
するとどうなるか?
地球の支配者はもはや人類でなくAIになってしまうということです。
計算上、2045年にこのときを迎えるらしい。
あまりにも未来過ぎて、はあ、という感じですが、
その頃までには人類もなんとか対応策を発見できているのでは?
でも、その対応策もAIに考えてもらうしかないんだろうから、
あいつら(AI)抜け道作るよなあ、と疑心暗鬼な今日この頃。

とりあえず今のところは、スマホの検索エンジンに声をかけるくらいの
平和なAIとのつき合いかたです。

プレジデントの行方

アメリカ大統領選挙が大詰を迎えています。
ヒラリー・クリントンvsドナルド・トランプの最終決戦は、
どういう結果をアメリカにもたらすのか?
大国アメリカのトップは、地球のなりゆきにも大きな影響をもたらす存在ですから、
世界中が見守っているこの一戦。
60年代のアメリカの左翼活動家、ジェリー・ルービンはかつて、
「米大統領選挙は日本や同盟国の国民も投票できるようにするべきだ。
だって、誰がなるかで周りの国も左右されるんだから」と言っていました。
今のところ日本バッシングで息巻くトランプさん。
昔から何かと話題を振りまいていた人です。
マンハッタンの5番街で金色に輝くビル、トランプタワーが有名な不動産王です。
ビル同様、本人もギラギラした感じでエネルギッシュ。
トークやスピーチは切れ味最高、毒舌・舌禍のオンパレードでシャープそのものなのに、
体型や服装は、どうもシャープとはいえないシルエットです。
だぼっとした印象のスーツにホワイトシャツ、
そこに赤か青、たまにピンクなどの無地のタイ。
柄物は99%レジメンタルタイです。
すっきりした細身のスーツやシャツに、渋い色や柄のタイをきりりとしめた、
オバマさんのようなスマートさはありません。
とはいえ今回は、ドナルドさんのみでなく、ほかの候補者も、
あまりおしゃれ感を漂わせている人がいないのが現状です。
1人、ヒラリーさんが、すっきりしたシンプルデザインのジャケットを着こなして、
現代的な都会感を漂わせています。
ちょっとゆるっとしたボディラインをうまくカバーしつつ、
知的で凛々しいたたずまいに見せる。
さすが女性候補はこのあたりを心得ています。

ところで、今回の大統領選のもうひとつの特徴は、
目玉候補がみんな高齢なこと。
民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン 68歳、
ライバルのバーニー・サンダース 74歳
共和党の大統領候補ドナルド・トランプ 69歳。
(共和党内でのトランプさんのライバル、テッド・クルーズ氏は45歳、
もう1人のライバル マルコ・ルビオ氏は44歳ですが、
ほぼトランプさんが共和党の代表になると見られています)
日本で言えば前期高齢者(64〜74歳)にあたる人たちが、
全米を移動しての選挙活動を展開して演説を繰り広げているのですから、
そのタフさに驚かされます。
これまで選挙ごとに若返っていたという印象のある米大統領目玉候補が
今回は一気に年齢を上げてきた点が、とても興味深く感じます。

高齢者というキーワードつながりでいえば、
近頃話題の映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』は、
タイトル通り、94歳のファッションアイコンに迫ったドキュメンタリーです。
60年代からインテリアデザイナーとしてホワイトハウスの内装にも関わっていた
アイリスは、80代でファッションプランナーとしても活動を開始。
トレンドやブランドにこだわらない自由な発想でコーディネートするスタイルは、
ドリス・ヴァン・ノッテンやアレキサンダー・ウォンなどの
若手デザイナーたちにもファンが多いのだとか。
実際、彼女のスタイリングは金髪のショートヘアに大きなフレームの眼鏡、
真っ赤なルージュ、カラフルな色の大胆なプリントのトップスに、
エスニックな大ぶりのアクセサリー、といった、目にも楽しいコーディネート。
94歳という高齢の女性がこういうキャラクターで注目を集めて、
ファッションアイコンとしてリスペクトされているという点に、
アメリカのファッションの歴史の深さを感じます。
ひるがえって、日本でファッションアイコンとして話題になるのは、
国内外のブランド物をいち早くゲットして身にまとっている、
若くてかわいい着せ替え人形さんたちばかり。
それもまあ、ブランド品ビジネスの動く看板なのだから仕方ないのですが、
この高齢社会、アイリスのような存在が早く登場して
注目を集めてほしいもの。
最近、おしゃれな高齢のお嬢様方(みの・もんた的表現)の写真集なども、
出始めていますし、街行くシニアのファッションも日々おしゃれにはなっています。
が、目を見張るほどおしゃれな人が多いのは、
やはり銀座や青山、恵比寿や目黒、田園調布あたりを闊歩する、
富裕層高齢マダムというのが現状です。
ただ、10年後くらいには、そこいらの街を歩く年金生活マダムでも、
目を見張るおしゃれさんになっている時代がくると思います。
たとえばそこいらのファミレスでも内装が、
一昔前のおしゃれカフェくらいのインテリアになっている今日このごろ。
10年後には庶民派おばあちゃま・おじいちゃま御用達の、
洋品屋さんのファッションアイテムが、
H&M、くらいにはなっているはず。
だいたい、年を重ねるほどいろいろなしがらみから解放されて、
肉体的や経済的には不自由な面もあるかもですが、精神的には
本人さえ望めば、もう一度青少年のごとく自由になれるはず。
老いてこそ、服に惚けていたいものです。
と、米大統領選の高齢化に、日本もうかうかしていられないぞと思う春のはじめです。

ジギーは★になった。

今年は、はじまって早々、日本国内を騒がせる芸能ニュースが二連発で出た。
そして世界を揺るがす大きなニュースは、デヴィッド・ボウイの死だろう。
70年代初期、ボウイと並ぶ、いや、一時期はボウイ以上の人気ポップスターだった、
T-REXのマーク・ボーランは、1977年に30歳の若さで、
早々に世を去ってしまった。
そのせいか、対比するボウイは90になっても100歳を過ぎても、
粋なご長寿ぶりを見せてくれるのだとばかり思っていたフシがある。
遺作になったアルバム「★(Black Star)」は、すでに死期を悟っていた彼が、
闘病しながら制作し、彼の死が発表される数日前にリリースされた。
(同名のシングルは昨年に先行発売されている)
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによれば、
このアルバムは彼からの最後の、ファンへの贈り物だったのだという。
見事。
世に出たときから、セルフプロデュースの天才だったボウイだけれど、
死に際してなお、スマートな幕の降ろし方をきちんと考えていたのだ。
決して華美でも大げさでもなく、クールに静かに彼は逝き、
それでもきちんとメッセージを残してくれている。
やはりすごいアーティストだ。
1972年、ボウイの出世作である、
“The Rise and fall of Ziggy Stardust with the The Spiders from Mars”は、
宇宙から地球にやって来た男、Ziggyがロックスターになって、
やがて破滅するというストーリーのコンセプトアルバムだった。
宇宙人Ziggyはロックスターになるのだけれど、紆余曲折あって最後には自殺を遂げる。
こんな風に登場したZiggy Stardust=David Bowieは、
彼が創造したキャラクターに乗って瞬く間にスターダムを駆け上がった。
それから幾星霜。
40年以上も、彼は第一線にいて、決して古さを感じさせずにきた。

ボウイをモチーフとして描いたフィクションで、
「Velvet Goldmine」というイギリス映画(1989年作)がある。
監督のトッド・ハインズにインタビューしたとき、
彼自身はZiggy Stardustの頃はまだ子供で、
ボウイやT=REXをリアルタイムでみることはできなくて、
成長してから後追いでレコードや映像に触れたのだと言っていた。
ボウイをはじめとするグラムロックをテーマにした映画を作るに当たって、
彼はなぜ主人公のモデルにマーク・ボーランでなくボウイを選んだのか?
「ボウイは髪をばっさり切ったからね」と、トッドは即答した。
「マーク・ボーランは長いままだった。まだ、過去に未練があったんだよ。
ボウイがショートヘアを立てて登場したとき、
新しい時代が来たとみんな思ったはずだ」
確かに、一作前のアルバムまで美しい金髪の巻き毛ロングヘアだったボウイは、
Ziggyになったとたん、むしりとったような不揃いの短髪になっていた。
その髪型は実に斬新で不穏な空気さえ醸し出していた。
あのヘアスタイルに比べたら、かつては不良だのアウトローだのと言われたロングヘアが、
なんと牧歌的でのんびりして見えたことだろう。
映画”Easy Rider”ではヒッピーたちが、髪が長いというだけで保守的な南部のおっさんに
銃殺されてしまったりしたのだが、そんな反体制のシンボルであったロングヘアの価値を、
ボウイはもののみごとに駆逐したのだ。
その後も彼はさまざまに変化して時代を乗り越えて来たわけだけれど、
David Bowieという人物自身、彼が創造したキャラクターのひとつなのだろう。
彼の人生という見応えあるドラマを私たちは見ていたのだ。
ガンで数年間も闘病していたことは、その死まで公にされていなかった。
そんなストーリーの終わり方が、みごとにボウイ。
宇宙からやって来た男は、また宇宙に戻って行った。

もう20年くらい前になるか、ロンドンで服のブランドを主宰していた友人のところに、
ある日電話がかかった。出てみると、「こんにちは!デビッド・ボウイです」。
なんと本人が直接電話をかけてきて、服を注文したのだという。
この話は続編があって、ある日また友人のアトリエの電話が鳴り、出てみると
「こんにちは!ミック・ジャガーです」。なんとまた直接本人から電話。
イギリスのロックスターは身軽だね。
2人のロックスターから注文を受けた友人はハッピーだったかというと、
「勘弁してって感じだったよ。2人とも選んだのが同じスーツ!
しばらくは2人が同じ服で鉢合わせしないかと心配でたまらなかったよ!」
とのことでした。

ハッピー&ヘルシー・ニュー・イヤー

taru
迎春

新しい年が明けました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

元日は毎年、明治神宮に初詣に出かけます。
まだ元号が昭和だった頃からの習慣です。
毎年、初詣の人数が増えている気がするのですが、
今年は特に多かったように思います。
そして、海外の方たちの参拝もすごく多くなりました。
絵馬を見ても英語をはじめ、多言語で書かれたものが増えています。
その中の英語で書かれた一枚の、
「家族がハッピーで健康に暮らせますように」
というフレーズが目に入って来てしまったのですが、
人が願うことは万国共通であるのに、なぜ争いが起きてしまうんだろうと、
正月早々青臭いことを思ってしまいました。
20〜30年前から見れば、世界はどんどん狭くなっています。
面積ということでなく、友人との間に共通の友達がいたと発覚したときに、
「世間は狭いね」という、あの感覚です。
国と国の行き来も昔から比べれば経済面も含めてずっと自由になったし、
インターネットの発達で地球の裏側の人と知り合ったり
親交を深めたりすることができるようになりました。
今、日本を訪れる観光客は昨年で過去最高の1,796万人で、10年前の約3.4倍。
今日、原宿や新宿のショッピングエリアを回ったら、
聞こえてくるのはほとんど外国語でした。
海外からの人たちは、すでに日本で人気だったり評判になっているもの以外に、
ほとんどの日本人が興味を持っていなかったようなものまで
そこにおもしろさを発見・発掘します。
自国民にとってはあたりまえ過ぎて見逃していたモノの魅力に
今さらながら気づいて、足元を見直す。
そういうことが、国の活性化につながっていくのだと思います。
そして、今朝はうちの近所の駅に降り立った2人の青年が(日本人)
各々首からヴィンテージなフィルムカメラを下げていました。
1人がもう1人に、これから訪れる神社の説明をしています。
確かに私の住む所は、町なかに貝塚などがいくつも残り、
新築工事の際に地面を掘ると遺跡が出てしまって、
工事が中断して困るようなところです。
古い歴史はあるのですが、歴史以外にはほぼ何もない街です。
にもかかわらず、最近は近場の町探検隊のような人がよそから来て、
よくスマホの地図とでかいカメラを手に歩いていたりします。
中にはおばさんトリオもいて「多摩川の河原にはどう行けばいいの?」
と聞かれたこともありました。
(うちの街は小さいので、住人ならまず、河原への道を知らない人はいません)
そしてこんな小さな何もない町でも、
路行く人の外国人率が前年比5割アップ(当社比)という気がします。
これもまた、日本の縮図といいますか、
国は海外からの観光客が増え、市町村は近隣からの観光客が増え、
大なり小なり、それぞれの文化が行き交う。
今年はそういうことがもっと増えて行くはずで、
その中で自分がどういう役目を担っていけるか、
一人ひとりが軽〜く考えてみたら、
それも活性化に弾みがつくのでは?と思いました。
2016年が、より「ハッピーで健康的」でありますように。

冬空の下のオレンジ

ちょっと前に紅葉がはじまったと思っていたら、
気づけばもうほとんどの葉が落ちています。
今年は何十年に一度くらいの暖冬になるという予報です。

ともあれ、寒い・暑いといった季節に合わせて
それなりのオシャレを考えるのがまた楽しい。

今年はレディスに関して言えば、バイカラー(2色使い)のコートがトレンドです。
ウエストあたりで色や素材が切り替わっていたり、
表地と裏地が色違いになっていたり、
フードの内側の色だけ違っていたり。
色でアクセントを効かせたものを多く見かけます。
何年か前から、ワンピースやトップス、バッグなどは、
バイカラー使いのものが人気がありましたが、
今年は一気にコートまで出揃った感じがあります。

では、メンズでのバイカラーアイテムは?
カーディガンなどがおすすめ。
ダークグレーと生成り、グレーと赤茶など、
発色の異なる2色で、胸のあたりから切り替えたものや、
ブラウンやグレーなどのダークな色目の身頃に、
襟ぐりや前たての縁のみオレンジや黄緑と言った、
明るい色目のラインが走っているものなど、
今年のニット類はダーク×ヴィヴィッドの色使いが、
アクセントになったものが目立ちます。
カーディやセーターは無地にしておきたい場合、
マフラーや手袋、靴下といった小物類でバイカラーを楽しんでみては?
ニット帽の折り返しの色が違っていたり、
靴下のくるぶしあたりから違う色になっていたりして、
それもグレーとピンクや黒とオレンジなど、ポップな色使いが今年の特徴です。
今年は革手袋も、グリーンやオレンジ、赤といった、
明るい色目のものを多く見かけますが、
中には手の平側と甲の色を違えたバイカラー手袋もあり、
小物で遊べるのが今年の冬スタイルの傾向です。

ドレスシャツにタイ、ジャケット、コートはきっちりと決めて、
マフラーをはじめとした小物でイタリア男のような洒落っ気を見せる。
そんなこんなで、はじまったばかりの冬のスタイルプランを立ててみてください。
どんより曇り空の朝の出勤でも、ダークな手袋にチラッと効いた、
オレンジやグリーンがゲンキをくれるかも。