マダム・ヴィヴィアンの新風

最近、「オシャレ番長」と評判のイギリスのメイ首相。
新首相に就任以来、政治家には珍しい、
モードなスタイリングが注目を集めています。
メイさんは60歳。英国国教の牧師の娘で、オックスフォード大学卒。
内容的には異なりますが日本でいえば東大卒的な高学歴です。
卒業後、イングランド銀行に勤めたのち、
政治家に転身した人で保守党の党首でもあります。
あまり自分の考えを表さない人で「氷の女王」の異名を取るとか。
少なくともファッションには考えがありありと表れていますが。
とはいえ、キャリアだけ見ればファッションとは無縁のように思えます。
仮に服が好き、装うことが好きであったとしても、
バックグラウンドやこれまでのキャリアからして、
シンプルで無難な格好か、いかにもマダムな保守系ゴージャスさか、
いきなりファッションに目覚めて勘違いな派手さに走りがち。
政治家とか文化人に多いのがその3つのパターンです。
その人たちのこれまでの人生で、とりあえずファッションは、
突き詰める対象ではなかったんだろうなと見て取れるスタイリングというか。
そんな中で小池百合子都知事は、とてもおしゃれですが、やはり保守系。
年齢相応・地位と立場相応の上質素材&仕立てのいい、
ベーシックなデザインの服をそつなくエレガントに着こなしています。
とはいえ、今の20〜60台くらいの年齢の女性の中で、
とくに小池さんファンでない限り、
そのファッションが大きく影響を及ぼすということはないような。
まあ、グリーンのものを身につけるとかはべつの話として。
その点、メイ首相は就任式のスタイリングという第一球で、
まずかっ飛ばしてくれました。
エリザベス女王の前で中腰になり挨拶するそのとき、
ミドル丈ほどのコートはネイビーと鮮やかなイエローとのバイカラー。
そして足元はヒョウ柄のローヒールパンプスといういでたち。
これで全世界のファッションマニアの心を鷲掴んだメイ首相。
以来、ホームラン球のボールをかっ飛ばし続けています。
とくにヴィヴィアン・ウエストウッドのような服は、
60歳のマダム、しかもモデル顔でもモードなヘアメイクもしていない、
普通のおばさん(失礼)が着こなすのはとてもむずかしいはず。
ところがメイさんはヴィヴィアンの中でも、
襟のデザインが変形で立体的でありながら、
全体の形はベーシックで無地のジャケット、というようなアイテムを選び、
すんなりスマートに着こなしています。
まあ、手足がとても長くてスタイル抜群という強みがあるとしても、
何を着てもとてもよく似合っていて、借りて来た服には見えない。
その感じからしてメイ首相は本当に服が好きなのだろうなと思わせます。
自分の風貌や体つきを全部ひっくるめた雰囲気。
それと自分の好みをすり合わせながら、服を選んで着こなす。
その楽しさをよく知っている人のスタイリングです。
某国の某大臣は、お嬢さんがスタイリストをなさっているとかで、
いつも女子大生か新人OLのようなアイテムでコーディネートしていますが、
オシャレ感を出すつもりでそうしているのだとしたら真逆の効果かと。
年齢やキャリアに見合ったオシャレ感を出さないと、
娘の服を借りているだけの若作りのお母さんにしか見えません。
せっかく、オシャレ分野でも評価されたいという意識をお持ちなのに、
そこが勿体無いし残念だなあ、といつ見ても思うのですが。
メイ首相がステキなのは、60歳という年齢で、
ヴィヴィアンを着こなし、それが若作りには見えない点。
それはアイテム選びや、
自身に似合うものを選び取る感覚にかかっているのですが、
まあ、そこがファッションセンスというものなのでしょう。
ちなみにかつて私がヴィヴィアンにインタビューしたとき、
「年齢層の高い人に着て欲しい、そういう人たちのために作っている」
と明言していました。
最近は、ヴィヴィアンもこなせるメイ首相のような、
年配のオシャレさんが日本にも増えているなあと感じます。

メイ首相はほとんどの服ずきな人がそうであるように、かなりの靴マニアです。
そのチョイスがまた、先程のヒョウ柄であったり、
ほかにもヘビ柄やマルチカラー、スタッズ付き、メタル使い、
爬虫類とビジューのコラボなど、
靴ずきにはたまらないコレクションをこれでもかと見せてくれます。
服も靴も含めて、メイさんの好みは
「シンプルかつどこかに強烈なスパイスが効いているもの」という気がします。
服がシンプルだったときは、靴が強烈だったり。
爬虫類にビジューをあしらった靴など、
一歩間違うとキッチュになってしまうアイテムを
エレガントにスタイリングできている点が、
メイ首相、ほかの政治家とはひと味もふた味も違います。
というか、首相のような政治家が履いている靴を、
え、これどこの?と血眼になって調べたくなるなんて、
こんな日がこようとは。
トランプショック同様、メイさんからも目が離せません。

そんなメイさんは無人島にひとつだけ持って行くとしたら何?
と聞かれて、「VOGUE」と答えたとか。
それほど服好きな結果のあのオシャレ番長ぷりや、
そのスタイルが多くの女性に影響を与えているという点が評価されて、
今回、アメリカ版VOGUE4月号の表紙に登場するとニュースになっていました。
これまでにサッチャー首相もUK版には登場したことがあるそうですが、
アメリカ版の表紙に出るのはメイ首相が初だそうです。
これは快挙といわざるを得ません。
メイ首相の別荘で撮影されたというその写真、見るのが楽しみです。

かつて小池百合子都知事が当時の米・ライス国務長官に絡めて、
「私をマダム寿司と呼んでくれ(So,why don’t you call me,Madam Sushi)
と言ったことをみなさん、覚えておいででしょうか?
これ、いまだに「百合子語録」のトップランキングにあると思うのですが、
今、メイさんは私の中で「マダム・ヴィヴィアン」であります。
政治✕ファッションて、本来噛み合わないものなので、
ちょっとクロスしてスパークすると、かなりおもしろいのです。

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