昭和の家に未来を見る。

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先日、取材で、東京都小金井市にある江戸東京たてもの園に行って来ました。
ここは墨田区にある江戸東京博物館の別館で、建物を専門に展示する野外美術館です。
約7ヘクタールの園内には江戸時代から昭和初期までの歴史を物語る建物が30棟、
元の場所から移築・復元されて建ち並んでいます。
藁葺き屋根などの古民家を移築した古民家園と違って、
ここのおもしろい所は、大正や昭和初期のモダン民家や
昭和の風情を伝える商家まで移築されているところ。
モダン住宅が並ぶ一角はまるでレトロなお屋敷町のようだし、
大正や昭和の商店が並ぶ一角は、歴史の彼方にタイムトリップした気分。
建物ズキ、住宅ズキの私は、この施設が大好きで開園当初は何回か通いました。
ここ14〜5年は行っておらず、久しぶりに行って見ると、
移築・復元されてからの長い年月、風雨にさらされてきた建物は風格を増し、
そして町並みはよりリアルなたたずまいになっていたのでした。
園内は3つのゾーンがあり、東ゾーンは昔の商家やお風呂屋さん、
酒屋さんや文具店などが並んでいます。
中央ゾーンは郷土資料の展示コーナーや、2.26事件の舞台となった高橋是清邸など、
歴史的な建物が移築されています。
そして今回の取材のお目当てのひとつがある西ゾーン。
ここにはさまざまな建築様式で建てられた、
大正から昭和初期のモダンな住宅が並んでいます。
中でも私のお気に入りが、前川國男邸です。
前川國男はル・コルビュジェの元で修行したこともあり、
戦後の日本の近代建築をリードした建築家として知られています。
その自邸として、品川区上大崎に1942(昭和17)年に建てられた住宅。
これが典型的な日本のモダニズム建築で、切妻屋根や障子を思わせる格子窓など、
和のテイストを取り入れつつモダンに仕上げてある名建築なのです。
リビングダイニングに書斎と寝室、ごく小さなキッチンというシンプルな作りで、
デザイン的にはまさに今の住宅の主流ともいえるスタイルです。
今から74年も前に、プロトタイプが生まれていたことに驚きます。
さらに、そのコンパクトさとたたずまいは現代なら、
ちょっと余裕のある一般人でも建てられそうな規模です。
著名にして売れっ子の建築家の家とあらば、今ならさぞや豪邸で、
とても庶民に手が届く類のものではないはず。
しかもこの家、この規模で、玄関脇に女中さん用の小部屋があるのです。
今昔の文化や暮らしの違いに思いを馳せてしまいます。
そして、この家の中で前川國男巨匠は、
いったいどういうファッションでくつろいでいたのか?
現代なら、この手の家にいる人はTシャツにジーンズか、
ジャージ素材のパンツでくつろいでいるはず。
前川さんのくつろぎスタイルは和服だろうか?
ドレスシャツにノータイくらいのカジュアルさだろうか?
でも外出時は当然、三つ揃いスーツに革靴、ハット着用とかでしょうか?
などなど思いを馳せていると、もちろん、デザインやサイズの違いはあっても、
基本、74年後の今もほとんどの男性はシャツにスーツ、革靴を履いて仕事に赴く、
ことに気づきます。
変わったのは、家にいる時のくつろぎスタイル。
着るものって、プライベートシーンから変化して行くのだと
今更ながら思いました。
今から74年後、人類は家で何を着てくつろいでいるのでしょうか?
まだ人類は地球にいるのでしょうか?
などなど、昔の日本の家や暮らしを見ていると、
思いはいつの間にか未来を見ていたりするものですね。

*写真は前川國男邸の外観と内観。
リビングには中二階があります。以前は上まで行けたと思うのですが、現在は禁止。
なんと言っても築74年ですから。
家具もすべて建築家のデザイン。ちょうちん型の照明のみイサム・ノグチで、
巨匠コラボです。

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