ドレスシャツに関する6つのQ&A


満開の桜には、見慣れた街の景色を一変させてしまうチカラがあります。
壮麗な桜並木はもちろん、
一本だけ立っているような桜もまた、凛々しい存在感があります。
その下で仕事仲間らしいおじさん二人が座って、
枝豆をつまみに発泡酒を飲んでいました。
なんだかとっても微笑ましくて、桜は愛情深い木だなあと思いました。
そんな桜も都心では盛りが過ぎ、あちこちで花吹雪に出会います。
歩いていると音もなく花びらがハラハラと舞い降りて来て
下を見れば道路や水面を覆う桜色の絨毯。
そんな光景もこの時季の風物詩です。

新入社員の方々は、社会人生活がはじまったばかりですね。
気持ちを楽にして、でも誠実に、なんでも吸収して、
大きく育っていかれますよう。
色々心配なことやわからないこともあると思いますが、
服装もそのひとつでは?
とりあえず、ドレスシャツに関しての「よくある質問」を
Q&A形式で書いてみますので、ぜひチェックして役立てていただければ幸いです。

【ドレスシャツに関する6つの疑問】

Q1
ビジネスユースで着るシャツは普通、何枚ぐらい持っていればいいの?

A:
襟や袖は皮脂などで汚れがちなので毎日着替えるとして、最低5枚は揃えておくと機能的。
(ちなみに「弊社は月数回土曜出勤あるよ〜」という方は最低6枚をおすすめします)
洗濯方法にもよりますが、家庭で洗濯する場合、シャツには約60回程度の耐久性があります。
5〜6枚のシャツをそれぞれ週1回着て洗濯するとすれば?
1年過ぎたくらいで買い替えてのメンバーフルチェンジをおすすめします。

Q:2
ビジネスユースだけで考えた場合、どういうシャツを揃えておけばいいの?

A:
ビジネスシーンで着用することを考えるなら、
白ベースの衿型ちがいで3枚、サックスベースやストライプなどで2枚、
を揃えておけば、どういうスーツにも対応できます。
同じ白ベースでも衿の形が変わると印象がちがって来ますし、
さらにサックスなどの色やストライプなどの柄で
だいぶ変化がつけられるので多様なコーディネートが可能です。

Q:3
洗濯を繰り返しているうちに、白いシャツが黄ばんできた!
この黄ばみ、落とせないの?

A:
黄ばみは皮膚から出る皮脂が原因です。洗剤だけでは充分に落とせないので
「酸素系漂白剤」の使用がおすすめ。
漂白剤を買うとき、絶対に、色柄まで脱色してしまう「塩素系漂白剤」とまちがわないように。
両者とも各洗剤メーカーから出ていますが表示の文字が小さいので要注意! 

Q:4
家で洗濯していたら衿先が黒ずんできた!
なぜでしょう?どうしたら防げるの?

A:
洗濯する水の中には目に見えない細かいほこりや糸くずなどが混ざっていて、
洗濯を繰り返すうち、それらがシャツの生地目から入り込んでしまいます。
入ったものが洗濯槽の回転による遠心力で、衿先に集まってしまうのが原因。
残念ながら取り除くのは難しいので、
あらかじめ白っぽいものと黒っぽいものを分けて洗うことをおすすめします。

Q:5
汚れたシャツもドライクリーニングに出せばきれいになるの?

A:
これまた残念ながらNOです。
ドライクリーニングは水洗いのできない製品、たとえばシルクやウールの素材や、
スーツやコートなどに対応する洗い方です。
油性の汚れ落ちは良好ですが、汗などの水性汚れは落ちません。
毎日着るような綿のシャツはドライクリーニングに不向きです。

Q:6
綿のシャツなどは洗濯したあと、どのくらい縮むの?

A:
シャツの製造は、JIS L 0217(103法)という基準に則って作られています。
この中で、家庭洗濯で縮み3%以内、伸び1%以内と定められています。
たとえば首周り39cm、裄丈84cmのシャツなら素材により、
最大、首周り1cm強、裄丈2.5cm縮むという計算になり、
裄丈なので、両袖はそれぞれ、最大1.25cmの縮み率ということになります。
クリーニングはこの基準の適用外なので、
数値がオーバーしたり、逆にボディプレスの使用によって、
身幅が広がる事例も増えています。
中には安くて上手なところもあるかも知れませんが、
技術があればそれなりの値段になります。
信頼できるクリーニング屋さんを探すことも服を長持ちさせるコツです。

(Q&A出典:
“THE DRESS SHIRTS BOOKLETーHow To Keep Your Dress Shirts Looking Smart”
©DO-1 SEWING INC.2016)

春先の一歩をスタイリング

やっと暖かくなったと思えば、また冬のような肌寒さが戻ってきたり
今年の春はなかなか手ごわいようです。
東京では全国に先駆けて開花宣言が出たとたんにまたも氷雨に見舞われ
桜もお気の毒に。
満開時期が遅れているおかげで今年は、入学式や入社式は花の下で、
という想い出深いシーンが展開するかも知れませんね。

新しい生活をスタートする人はもちろん、
これまでと全然変わらない、という人も、
なぜか新鮮な気分になるのが春のマジックです。
木々を見れば若葉が光り、
花々がいっせいに咲き誇るのですから、
それだけでも気持ちをアップさせてくれます。

暖かくなれば服装も変わり、厚手のものから薄いものへ、
それにともなって色目も薄くしたくなるもの。
さて、足元は?
冬場は黒い靴が多かったという場合は、ダークブラウンや
マロンブラウンなどの茶系、スエード素材なら思い切って、
ちょっと濃い目のベージュなどにしてみるのもいいですね。
就活や硬いビジネスシーンには不向きかも知れませんが、
やや自由度のある職場やオフタイムなら、
茶系の場合はローファーなどがおすすめ。
ローファーも、シンプルなものから、
タッセル付きのものや
馬具のような金具がついたビットローファーなどがあります。
ちなみにビットローファーの「ビット」とは
「ホースビット=馬のくつわ」のこと。
このローファーを最初に考案したのはかの有名なGUCCIで、
大人の男性が履いてもきちんとして見えるカジュアルシューズを、
世に出したかったのだとか。
それをデザインする過程において、
レディースのバッグに付けていた馬具の飾りを
メンズのローファーにつけてみたのだそうです。
「これいいじゃん!!」と当時のGUCCIのデザイナーや職人さんが
言ったかどうかは不明ですが、1953年の発売以来、
世界のモード市場では大評判となり、
今では様々なメーカーやブランドで作られている、
定番のローファーになっています。
これを履くと金具の効果で全体のイメージにちょっと光りが増します。
今年っぽいローファーを選ぶなら、
アッパーが浅く、脚の甲の部分の露出が多くなるものを。
靴の造りが華奢なイメージになり
イタリアンな雰囲気に仕上がります。
デニムやロンドンストライプのドレスシャツに淡い色の細身のパンツ、
足元にはイタリアンぽい繊細な造りで、なおかつ淡い色目の、
スエードのローファーを合わせる。
今年の春のスタイリングにはずみが付きそうです。

ところで就活中の方や、春から新入社員という方は、
履きなれない革靴で大変という場合もありそうですね。
最近はアッパーがビジネスシーン向けにデザインされた革靴でも、
ソールがそうとはわからない仕上げでラバーソールのものや、
履き口全体に目立たない仕様でストレッチ素材を施しているものなど、
足への負担を軽減している革靴が増えていますので要チェックです。

サクラが列島を静かに上がっていくこの季節。
新たな気分で軽い一歩を踏み出しましょう。

ユーロアメリカンの味わい

日を追うごとに春の兆しが色濃くなり、
花々が開花を待ちわびているこの空気感。
春ならではの静かなエネルギー、静かな盛り上がりを感じます。
季節の変わり目で初夏のように汗ばむ日もあれば、
急に冬日が舞い戻ってくる日もあります。
こんな季節のコーディネートにおすすめなのがデニムシャツです。
新鮮な素材感を醸し出しつつ、
この時季の気温の変化に対応してくれる素材でもあります。

デニム素材というと、印象としてはアメリカンな感覚がありますが、
世界で一番伊達男が揃うイタリアを見るまでもなく、
パリやロンドンの街角でも、オシャレな男たちのコーディネートに、
欠かせないアイテムとなっているのがデニムのシャツです。
いかにもヨーロピアンなアイテムで揃えた中に、
一点デニムを加えることで双方が引き立てあい、
粋で新鮮なスタイリングに変化します。
ヨーロッパの視点を経ることで、アメリカンなデニムシャツが、
新たなグローバルアイテムになっている気がします。

デニムシャツに合わせるアイテムとしては、
定番の紺色ジャケットはもちろんですが、
グレンチェックやガンクラブチェックなど
細かいチェック柄の細身のジャケットや
淡い色目の麻のジャケットなどと合わせるのが、
今期おすすめのスタイリングです。
紺色ジャケットの場合は、
普段より少し大胆な柄や色使いのタイを合わせたり
ちょっと冒険してみるのもいいですね。
タイを締めないときは、
麻やコットンの軽い素材のロングスカーフをプラスしても。
パンツは白系のものがおすすめ。
白、生成りや淡いベージュなど、
下半身を軽い色目にすると粋な感じが増し、
ヨーロピアンテイストになります。
腰周りにややゆとりがあり、裾に行くに従ってタイトになる、
そんなシルエットのパンツがトレンドといえそうです。
もちろん、丈は短めで。

さて、ここで肝心なのがデニムシャツ自体のセレクト。
定番アイテムなので、どこでもいつでも流通しているだけに、
ここはひとつ、大人の品格を醸し出せる、
上質な製品を選びたいところ。
土井縫工所の今月の新アイテムとして登場したデニムのシャツは、
インディゴと生成の糸で織った上品な色合いと、
肌に優しく触れるしなやかな風合いが特長の、
大人のビジネスマンのためのドレスシャツです。
淡い色調のバイオブリーチ加工と、
よりインディゴの藍を残したバイオウォッシュ加工の2色展開。
エントリーモデルにはホリゾンタルワイドカラーと
ボタンダウンの2つの襟があります。
ボタンダウンにタイを締めて、あえてタイバーをつける。
そんなスタイリングがヨーロピアンの
おしゃれ心かつ遊び心といえます。
土井縫工所の2017年SSのテーマは「ユーロ・アメリカン」
アメリカンなアイテムをヨーロッパテイストでスタイリングする。
ミラノやパリ、ロンドンの伊達男たちの感性で着こなすアメリカ。
同じ地平にあるのが現代ニッポンの洒落男たちの感性といえます。
上質なデニムのドレスシャツで、
この春のスタイリングをスタートさせてみては?

春を呼ぶリバティ

およそ技術開発されているものはほとんどみな、日々飛躍的に進化しています。
でも、ファッションやデザインに関しては、
進化するだけではなく、レトロ、つまり、過去に退行するのもスタイルのひとつ。
ファッションに関しては1960年代初期に、
一定の進化の過程を終えているような気がします。
もちろん個々のデザインであれば色々個性的なものは出ていますが、
ファッション体系の流れを変えるほど革命的なスタイルは、
60年代にもう出尽くしていると思うのです。
たとえばマリー・クワントのミニスカート以来、
「こんなのはじめて見た!!」というファッションに出会っていないような。
80年代に入ってからはボロルックとか、
グランジスタイルとかはありましたが、
それも、デザインそのものの変革ではなく、
わざと穴を開けたりするというアレンジの範疇でした。
かくして進化を止めたファッションは、
歴史の中からおもしろそうなモノをピックアップしては、
現代風にアレンジしています。
60年代以来、私たちはすでに新しいものではなく、
すでに作られたデザインのニューアル、リサイクル、リユース方向での
冒険を遂行していると言えます。
それはそれでおもしろいのですが、
もちろん、素材的にはこれからも進化して、
こんなの10年前は考えられなかったというような
画期的な素材が生まれる可能性はありそうです。

洋服を形作るものはデザインとパターン、生地と付属品、
そしてテキスタイル。
中でも、テキスタイルはデザイン同様、その時代のトレンドを担うものです。
別の言い方をすれば、はやりすたりに左右されるので、
一番新しかったものがあっという間に古くなっていき、
気がつけば一番古いものとなり、さらに気がつけば、
「今、これって新鮮じゃん!」となる。
そんなトレンドサークルが現代ファッションの実情だと思います。
さて、日々うつろうトレンドですが、
中には不滅のメンバーもいます。
とくにテキスタイルでは、ストライプ、水玉、花模様、ペイズリー。
いつどんなトレンドの時代も、このメンバーはレギュラー。
そして、リバティプリントもまた、どの時代にも一定の地位を占めています。
いつ見ても新鮮な印象を与えてくれる不思議な存在感。
とくにクラシックシリーズは、
100年以上も前にデザインされたプリント柄でありながら、
今なお多くの人を惹きつける磁力に満ちています。
アールヌーボースタイルを思わせる手法で描かれた植物柄は、
図案化されたものなのに野性的で生き生きとしていて、
パワフルな生命力を感じさせます。
なおかつオシャレでシック。
いつの時代にも新鮮に感じさせる要因は、そのあたりにありそうです。
そんなリバティプリントのシャツは襟元から見えているだけで、
見る人にスタイリッシュなイメージを与えます。
鮮やかな色調を用いたものや、抑えめな色調で描かれたものがあるので、
ジャケットの色目に合わせてコーディネートしてみましょう。
あるいはこれから春に向かい、
カーディガンなどで過ごす機会も増えてくる頃です。
V襟カーディガンのVゾーンからクラシカルなリバティプリントが見えると、
それだけで新鮮な印象を与えそう。
ディープなヨーロピアンテイストというイメージの
リバティプリントですが、あえてコットンパンツなどに合わせて、
アメリカンにスタイリングするのもコツ。
フローラルなリバティのシャツで、春を先取りしてみてはどうでしょう。
春夏には新柄のシャツも誕生します。

マダム・ヴィヴィアンの新風

最近、「オシャレ番長」と評判のイギリスのメイ首相。
新首相に就任以来、政治家には珍しい、
モードなスタイリングが注目を集めています。
メイさんは60歳。英国国教の牧師の娘で、オックスフォード大学卒。
内容的には異なりますが日本でいえば東大卒的な高学歴です。
卒業後、イングランド銀行に勤めたのち、
政治家に転身した人で保守党の党首でもあります。
あまり自分の考えを表さない人で「氷の女王」の異名を取るとか。
少なくともファッションには考えがありありと表れていますが。
とはいえ、キャリアだけ見ればファッションとは無縁のように思えます。
仮に服が好き、装うことが好きであったとしても、
バックグラウンドやこれまでのキャリアからして、
シンプルで無難な格好か、いかにもマダムな保守系ゴージャスさか、
いきなりファッションに目覚めて勘違いな派手さに走りがち。
政治家とか文化人に多いのがその3つのパターンです。
その人たちのこれまでの人生で、とりあえずファッションは、
突き詰める対象ではなかったんだろうなと見て取れるスタイリングというか。
そんな中で小池百合子都知事は、とてもおしゃれですが、やはり保守系。
年齢相応・地位と立場相応の上質素材&仕立てのいい、
ベーシックなデザインの服をそつなくエレガントに着こなしています。
とはいえ、今の20〜60台くらいの年齢の女性の中で、
とくに小池さんファンでない限り、
そのファッションが大きく影響を及ぼすということはないような。
まあ、グリーンのものを身につけるとかはべつの話として。
その点、メイ首相は就任式のスタイリングという第一球で、
まずかっ飛ばしてくれました。
エリザベス女王の前で中腰になり挨拶するそのとき、
ミドル丈ほどのコートはネイビーと鮮やかなイエローとのバイカラー。
そして足元はヒョウ柄のローヒールパンプスといういでたち。
これで全世界のファッションマニアの心を鷲掴んだメイ首相。
以来、ホームラン球のボールをかっ飛ばし続けています。
とくにヴィヴィアン・ウエストウッドのような服は、
60歳のマダム、しかもモデル顔でもモードなヘアメイクもしていない、
普通のおばさん(失礼)が着こなすのはとてもむずかしいはず。
ところがメイさんはヴィヴィアンの中でも、
襟のデザインが変形で立体的でありながら、
全体の形はベーシックで無地のジャケット、というようなアイテムを選び、
すんなりスマートに着こなしています。
まあ、手足がとても長くてスタイル抜群という強みがあるとしても、
何を着てもとてもよく似合っていて、借りて来た服には見えない。
その感じからしてメイ首相は本当に服が好きなのだろうなと思わせます。
自分の風貌や体つきを全部ひっくるめた雰囲気。
それと自分の好みをすり合わせながら、服を選んで着こなす。
その楽しさをよく知っている人のスタイリングです。
某国の某大臣は、お嬢さんがスタイリストをなさっているとかで、
いつも女子大生か新人OLのようなアイテムでコーディネートしていますが、
オシャレ感を出すつもりでそうしているのだとしたら真逆の効果かと。
年齢やキャリアに見合ったオシャレ感を出さないと、
娘の服を借りているだけの若作りのお母さんにしか見えません。
せっかく、オシャレ分野でも評価されたいという意識をお持ちなのに、
そこが勿体無いし残念だなあ、といつ見ても思うのですが。
メイ首相がステキなのは、60歳という年齢で、
ヴィヴィアンを着こなし、それが若作りには見えない点。
それはアイテム選びや、
自身に似合うものを選び取る感覚にかかっているのですが、
まあ、そこがファッションセンスというものなのでしょう。
ちなみにかつて私がヴィヴィアンにインタビューしたとき、
「年齢層の高い人に着て欲しい、そういう人たちのために作っている」
と明言していました。
最近は、ヴィヴィアンもこなせるメイ首相のような、
年配のオシャレさんが日本にも増えているなあと感じます。

メイ首相はほとんどの服ずきな人がそうであるように、かなりの靴マニアです。
そのチョイスがまた、先程のヒョウ柄であったり、
ほかにもヘビ柄やマルチカラー、スタッズ付き、メタル使い、
爬虫類とビジューのコラボなど、
靴ずきにはたまらないコレクションをこれでもかと見せてくれます。
服も靴も含めて、メイさんの好みは
「シンプルかつどこかに強烈なスパイスが効いているもの」という気がします。
服がシンプルだったときは、靴が強烈だったり。
爬虫類にビジューをあしらった靴など、
一歩間違うとキッチュになってしまうアイテムを
エレガントにスタイリングできている点が、
メイ首相、ほかの政治家とはひと味もふた味も違います。
というか、首相のような政治家が履いている靴を、
え、これどこの?と血眼になって調べたくなるなんて、
こんな日がこようとは。
トランプショック同様、メイさんからも目が離せません。

そんなメイさんは無人島にひとつだけ持って行くとしたら何?
と聞かれて、「VOGUE」と答えたとか。
それほど服好きな結果のあのオシャレ番長ぷりや、
そのスタイルが多くの女性に影響を与えているという点が評価されて、
今回、アメリカ版VOGUE4月号の表紙に登場するとニュースになっていました。
これまでにサッチャー首相もUK版には登場したことがあるそうですが、
アメリカ版の表紙に出るのはメイ首相が初だそうです。
これは快挙といわざるを得ません。
メイ首相の別荘で撮影されたというその写真、見るのが楽しみです。

かつて小池百合子都知事が当時の米・ライス国務長官に絡めて、
「私をマダム寿司と呼んでくれ(So,why don’t you call me,Madam Sushi)
と言ったことをみなさん、覚えておいででしょうか?
これ、いまだに「百合子語録」のトップランキングにあると思うのですが、
今、メイさんは私の中で「マダム・ヴィヴィアン」であります。
政治✕ファッションて、本来噛み合わないものなので、
ちょっとクロスしてスパークすると、かなりおもしろいのです。

この春は自分を仕立ててみよう。


クリスマスから年末年始へと続いたイベントシーズンも
やっと落ち着いた頃ではないでしょうか?
ここしばらくの飲み過ぎ・食べ過ぎを後悔して、
ウエイトコントロールをはじめる方も多いのでは?

服をおしゃれに着こなすには、ボディラインが重要、という考え方があります。
事実、ショップなどで一枚の服に一目惚れしつつも、
自分の体型では無理かもと泣く泣くあきらめる、
そんな経験はほとんどの方にあるかと。

確かに、スリムだったり、小顔で手足が細長かったりすれば、
どんな服を着ても似合うし、
それなりに着こなすことができます。
モデルさんがパリコレで拍手喝采を受けたバルーンワンピースも
私が着たらどう見てもゆるキャラの着ぐるみにしか見えないとか。
でも、ショップのマヌカンの方は、ショーモデルより小さくても、
それなりに着こなしていたりします。
てことは、やっぱりボディラインと顔のサイズと雰囲気がモノを言うのか?
などなど、服とボディラインの関係は、
おしゃれを意識する上で、つねに目の前に立ちはだかる大きな壁です。

そんなとき、少し勇気を与えてくれるのが、
「The Sartorialist」という本です。
ご存じの方も多いと思いますが、
これは、同名の人気サイトが紙媒体になって出版されたもので、
オンライン同様、とても支持を集めているようです。
この写真のものは一冊目ですが、現在、3冊まで出版されています。
著者のスコット・シューマンは、独学で写真をはじめ、
ファッションに興味があったものの、いわゆるファッション写真ではなく、
ストリートで出会うおしゃれな人たちを撮ることに興味があったといいます。
彼が選ぶ人は、それこそ世界的なセレブやファッショニスタもいますが、
チマタの無名な人々がほとんどでした。
中にはいわゆるおデブさんや、
体型的に見て、まずモデルは無理という人も大勢います。
でも、それぞれにその人らしいおしゃれをしていて、
全員、迫力も説得力も魅力も抜群です。
スコットは彼らの写真を載せたストリートスナップのサイトを
2005年にスタート。
以来、世界中のファッション大好きさんたちの間で評判となり、
今では一日で10万ビュー以上あるといわれ、
彼は「世界で最もデザインに影響を与えた100人」に選ばれたり、
ベストブロガーに選ばれたりしています。
サイト名と著書名の「The Sartorialist」は、仕立人というような意味。
そう、服を仕立てる人です。
登場している人たちは、実際に自分で服を仕立てているわけではありませんが、
(中にはそんな人もいるかもですが)
自分に似合うものを探して組み合わせて着こなすことが、
自分を仕立てることになる、そんな意味合いではないかと思います。
サイトや写真集には、若い人からおじいさん・おばあさんまで、
経済力を感じさせる高級スタイルから、
およそ経費をかけていないエコノミースタイルまで、
さまざまな人たちが登場しますが、
共通しているのは、全員、着るものにこだわっているという風情。
一見してそれとわかる小粋なファッショニスタのみならず、
一見見逃しがちなヨレヨレ風のじーさんが、
よく見れば相当こだわってアイテム選びをしているのがわかります。
服を着ることの楽しさや装うことは、
今日何を食べるかということと同じ、すなわち人生だということを、
改めて思い知らされるサイトであり写真集です。

スタイリングを集めるというフィールドワークは、
民俗学的にもすこぶるおもしろい企画という気がします。
写し取られているのは室内空間や生活スタイルそのものではないにせよ、
人は服を着てそこに立っているだけで、
その人の生活環境をも背負っているんだなと感じさせます。
つまり、服は人生そのもの。
だからこそ、ストリートスナップはおもしろい。
ちょっと体重過多でもおちびちゃんでも痩せすぎでも顔が大きくても、
つまりアンチファッションな体型でも、
「これが私なのよ」という意識さえあれば、
おのずと選ぶものもその人らしさが出て、
その人にしかできないスタイリングが生み出されて、
説得力と魅力が出てくるものだと。
「The Sartorialist」には、ファッションのひとつの答えがあります。

サイトを見ているだけで、スタイリングへの意欲が湧いてきそうです。
この春のスタイリングの参考にどうぞ。

写真集は、 ”The Sartorialist” Scott Schuman   Penguin books
サイトは、 http://www.thesartorialist.com/
です。ご覧あれ。

賀正

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さてさて、今年はトランプ新大統領が誕生します。
オバマさんが大統領に就任したときの、
世界がリベラルで開かれた方向に行くかのような印象とちがって、
保護主義的な方向に向かって行くような印象があります。
とはいえ、実際にオバマ政権以降で世界はリベラルさを増したかといえば
とくにそうとも言えないし、
トランプ政権で世界がどう変わって行くのか、
今はただ世界が穏やかでありますようにと祈るしかありません。

とりあえず酉年の年が明けました。
酉の市、お酉様でも知られるように、
酉は商売繁盛を招く福神です。
古来、「酉」という文字は穀物の結実や収穫を意味していたといわれます。
すべての意味で実り多き年でありますよう。

トランプ前の静けさ。

IMG_0264hiroba大方の予想を裏切って、まさかのトランプさん勝利から早半月。
この結果が吉と出るか凶と出るか、世界が知るのはいつになるのでしょう。
その昔、アメリカの左翼主義活動家、ジェリー・ルービンの
”DO IT! 革命のシナリオ”という本を読んだとき
(ロック好き女子高生の頃ね)
「アメリカの大統領が世界情勢を左右するんだから、
米大統領選にはアメリカ人だけでなく、
世界中の人が投票できるシステムにするべきだ」
と書いてあってびっくりしたことがあります。
まだ世界情勢にうとかったこともあるし、
米大統領にそれほどのパワーがあるという実感もなかったので、
アメリカ人の意識の中でのアメリカや大統領の偉大さを
見せつけられた思いでした。
あれから長い長い時が流れて、今は実感しています。
アメリカの大統領がもたらす世界への影響を。
それにしてもトランプさん、あのスーツ姿はどうにもこうにも。
イタリア製の数十万もするスーツと知って逆に驚いたくらい。
質感とか色合いとかシルエットとかに、まずエッジが感じられない。
シャツもいいものなのだろうとはお察ししますが、
いつも白で変哲もなく、タイにいたっては(以下略)……。
オバマさんが大統領になったときのスマートさ、
スーツやシャツ、タイのセレクションのスタイリッシュさが懐かしい。
まあ、トランプさんは人生にファッションセンスは、
無関係という方なのでしょうし、
有名になれば女の子は自由になるというお考えらしいから、
そこでもオシャレなスーツなんて関係ないのかも知れません。
トランプタワーにある自邸のインテリアもパワフルです。
トプカピ宮殿かパルテノン宮殿か?!というような、
大理石の円柱のある金ピカのリビング、
天井にはルネッサンス風天井画あり。
でも、ペントハウスとはいえマンションの一室で築30年以上だから、
インテリアの様式に対して天井が低過ぎ。
でも細かいことは気にしないトランプさん。
ファッションにもインテリアにもあまりスタイルを求めない方らしい。
スタイルのよさが重要なのは女性だけのようです。

ちなみにファッションとインテリアは切り離して考えられないものだと思います。
何を着て暮らすかということは、
どんな部屋に住むかということとイコールのはず。
それはもちろん、お金をかけるかどうかの問題ではなく、
どれを選ぶかということです。
バッグは奮発してGucciだけど、ベッドは『無印』でも問題ない。
その人のスタイルやテイストがそこにあれば、衣と住は重なるはず。
私は電車内で前に座った人の服装や持ち物を見ると、
自動的にその人の住環境が重なって見えるタチ(勝手な妄想ともいいます)。
人は住環境までを身にまとって歩いていると思っています。

そんな私には見逃せない企画、
「モードとインテリアの20世紀展ーポワレからシャネル、サンローランまでー」
に先日行ってきました。
会期期限の終了が迫り、主にインテリア目的で、滑り込んだものの……。
展示物はファッション中心で、インテリアは1900〜1960までの
当時の室内をイラストで再現した数点のパネルのみ。
唯一、「1940-1959」の展示室にイームズのシェルチェアが置いてあって
「ご自由にお座りください」と書いてあったけど、
これ、いまどきは「うちにあるんですけど」率の高いチョイスですよね。
そこらのカフェでもありますから。残念です。
何年か前に芸大の美術館でバウハウス展を見た時は、
家具もあったし、確かキッチン含む室内の再現展示もあったような。
そういうのを期待して行ったのですが。
今回は島根県立石見美術館のコレクションの展示ということで、
多分そこはファッションが中心で、
インテリア関連のコレクションはないのかも知れませんが、
展示会名に「インテリア」を入れる以上、
ヌーボーもデコも60’も、少しは家具や雑貨を揃えて欲しかったような。
とはいえ「1960’s」の展示室でアンドレ・クレージュのドレスやブーツとともに、
クレージュがかつてデザインに携わったミノルタ製のカメラが展示されていて、
これが見られただけでももう満足です。
そのポップさ、かわいさときたら、今発売されても人気が出そうというアイテム。
ちなみにそのカメラ、デザインが70年代ぽいなあと思っていたら、
調べたところ、1983年の製品でした。あらあら。

会場の『パナソニック 汐留ミュージアム』があるのは、
日テレの社屋も、話題の電通本社ビルもある、高層ビルが立ち並ぶ再開発地区。
渋谷・新宿・六本木、あるいは銀座あたりともちがう、
過去の影がない、近未来感漂う街です。
ビルの谷間を新交通システム「ゆりかもめ」がすり抜けていく景色に、
鉄腕アトムの漫画の世界がいつの間にか現実になっているのだと改めて認識。
近くのビルのTOWER RECORDで女の子アイドルが握手会と、
インストアライブを開催していました。
初老のおじさまが嬉しそうにミニスカートのアイドルと
握手していたりして、世の中、まだ平和のようです。
オバマ政権が終幕に向かう中、汐留はいたって静かでした。

写真は、「1920-1939」時代の展示室。
マネキンの背後のパネルがインテリアの展示ということでした。
ミュージアムの近所のビルのパティオ。
雨模様とはいえ週末の午後。それにしては人もまばらな近未来の街です。

答えは風に吹かれているらしい。

今年のノーベル文学賞をボブ・ディランが受賞したということで、
世界中が驚いたのではないでしょうか。
いうまでもなく、ディランはミュージシャンですから。
私もニュースで知ったときは「え?ディランて小説書いてたんだ?!」と思いました。
知らない間にそれが出版されていて、評価の対象になったのかと思ったし、
ディランほどの人なら、興味深いものを書くだろうし、
読んでみたいと思ったのでした。
ところが、受賞の対象は一連の楽曲における歌詞だというので、またびっくり。
彼の偉大さや文学性も認識しているつもりではあるけれど、
ノーベル文学賞を選考するような人たちがそれを評価するということは、
やはり驚きでした。
選考の理由は「アメリカの輝かしい楽曲の伝統の中で、
新しい詩的表現を生み出してきたこと」
なんだそうです。
確かに、60年代の欧米のポップミュージックの歌詞といえば、
「道を歩いていたら、向こうからすげえかわいいコがやって来たんだ。
俺はもう一目惚れ、心はウキウキ、思わず口笛を吹いたぜ」
みたいなお気楽なものがほとんどでした。
そこに「どれほどの道を歩けば、人は彼を男と認めるんだ?」
という歌詞をひっさげて登場したのですから、
道を歩くのはかわいいコに一目惚れするためと思っていた連中にしてみたら、
え?そうくる?みたいな新鮮な衝撃だったのではないでしょうか?
ビート文学の騎手であった作家アレン・ギンズバーグも、
ディランの詩を文学的だと賞賛したと言います。
ディランが登場した1960年代初期から後期にかけては、
若者文化が大きく変わろうとしていた、
あるいは、世界は変わるんだと誰もが信じていた、
そんな空気に満ちていた時代でした。
それまで、娯楽一辺倒だったポップ・ミュージックに、
芸術的な音と哲学的あるいは叙情的な詩を持つ、
独特の世界を表現する人たちが増えていきました。
そのムーブメントの中心にディランがいたように思います。
当時の多くのミュージシャンに影響を与えていて、
あのデヴィッド・ボウイもHunky Dory”というアルバムの中で
“Song for Bob Dylan”という曲を書いているのですが、
内容はともかく曲調や歌い方がまさにディラン調。
ディランの曲をカバーする人たちも続々登場しました。
ノーベル文学賞がボブ・ディランに決まったと発表した、
選考委員である大学教授サラ・ダニアスさんは、
記者から「あなたはボブディランを聴いたことがあるのか?」と聞かれて、
「ものすごく聴きこんでいたわけではないけれど、
彼の音楽はいつも身の回りにありました」
というような感じのことを言っていました。
さらに続けて「多分、世代の問題ではないでしょうか?
私はデヴィッド・ボウイのファンでした」
といったので、その回答にびっくり。
一見、全くそんな感じに見えないマジメそうな女性で、
人は見かけによならいと思ったものです。
デスメタル系のバンドのライブで大手企業のOL風のお姉さんが、
いきなりヘドバンをはじめてびっくりすることがありますが、
見かけによらない&人に歴史ありと思わせてくれます。
ともあれ、音楽の歌詞であっても、文学性に満ちたものは数多い。
日本のミュージシャンの詩にもさながら純文学のような歌詞が多々あります。
「最後の白い鳥は何を餌に生き延びてる
新月の蒼い海を確かめるように高く低く、
殻が割れるまでどこかで見ているように
生まれたらすぐにさらいに来るかのように
行く人 来る人 誰かを待つ人 もうすぐ始発のバスが来る
心が心を許せる時には、どうして姿形はないんだろう」
というのは吉井和哉というミュージシャンの”Hearts”という曲の歌詞ですが、
言葉の先から広がる世界観の鮮明さは、たちまち引き込まれる魅力的な小説のようです。
ミュージシャンになっていなかったら、
純文学の作家になっていたかもと思える人々もいる中、
逆に19世紀のフランスの詩人アルチュール・ランボーなどは、
現代に生まれていたら絶対パンクミュージシャンだったんだろうなと思います。
「骸骨たちが踊り狂う、もう踊りだか殴り合いだか知ったこっちゃない、さあ、踊れ」
という詩なんて、実にパンクです。
そういう意味ではボブ・ディランがノーベル文学賞をとっても不思議ではないのですが、
毎年受賞を取りざたされる本職の作家さんたちの身になってみれば、
なんとも鼻白む思いではないでしょうか?
しかも、受賞後、ディランは2週間もノーベル賞の財団に連絡しなかったし。
結局、連絡して快諾したというので一件落着と相成ったのですが、
なんですぐに連絡しなかったのかは謎のまま。
答えは風に吹かれているのでしょう。
私は、一部のディランファンのように
「彼はストイックだし権威を嫌うからこんな賞なんて許否するに決まってる」
とは思いませんでした。
ディランて、結構俗っぽい人なんじゃないかという印象があります。
理由は2つ。
まず、彼が昔つきあってた彼女がイーディ・セジウィックだったこと。
イーディーは60年代にアンディ・ウォホールの映画に出ていた、
当時のファッションアイコンでありいわゆるパーティー・ピープルです。
今見てもかわいいしファッショナブルだしカッコいい女の子だと思うけれど、
いわゆるボブ・ディランなイメージとは真逆な存在。
彼女とつきあっちゃうわけだ、ディランて、とそれを知った時思った次第。
もちろん、そんなディランをおもしろい人だなあと思ったのですが。
二つ目の理由は、ディランが60年代にロンドンでライブをしたときのこと。
当時「イギリスのボブ・ディラン」と言われていた、
フォーク・シンガーのドノバンが、ディランのコンサートを見に来ました。
するとディランは楽屋で「ドノバンは来てるのか?」と、
かなりナーバスな感じで気にしていて、
一方、ディランに会ったドノバンは淡々としていて平常時な感じ。
というシーンをドキュメンタリーフィルムで見たのですが、
普通なら二番煎じと言われているドノバンのほうが緊張して、
ナーバスになっていていいはず。
ところが緊張しているのはディランのほうだったので、
この人は案外生々しい俗っぽさがある人なんだと思って、
そこから、それ以前より好きになったのでした。
ストイックな印象の裏の生々しさというギャップがいいですよね。
その逆でもいいけれどね。
そんなボブ・ディラン。イーディとつきあうくらいだから、
オシャレにも敏感な人であるはず。
細身のジャケットや細身のジーンズが特徴ですが、
それは今のファッションにも通じるものがあります。

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写真は
1,2
アルバム”Highway 61 Revisited_1965”の表と裏。
トライアンフのノベルティーTシャツに、ちょっとサイケデリック感のある柄物シャツ。
曲は、”Like a Rolling Stone “ほか。
時は東京オリンピックの次の年。

3 
同アルバムCDの中に掲載されていた写真。
タイトなジャケットにタイトなパンツ。


ポスター。
アルバム、”Bob Dylan’s Greatest Hits_1967″のオマケについていた。
伝説のグラフィックデザイナー、ミルトン・グレイザー作

photo&information by H.H.

昭和の家に未来を見る。

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先日、取材で、東京都小金井市にある江戸東京たてもの園に行って来ました。
ここは墨田区にある江戸東京博物館の別館で、建物を専門に展示する野外美術館です。
約7ヘクタールの園内には江戸時代から昭和初期までの歴史を物語る建物が30棟、
元の場所から移築・復元されて建ち並んでいます。
藁葺き屋根などの古民家を移築した古民家園と違って、
ここのおもしろい所は、大正や昭和初期のモダン民家や
昭和の風情を伝える商家まで移築されているところ。
モダン住宅が並ぶ一角はまるでレトロなお屋敷町のようだし、
大正や昭和の商店が並ぶ一角は、歴史の彼方にタイムトリップした気分。
建物ズキ、住宅ズキの私は、この施設が大好きで開園当初は何回か通いました。
ここ14〜5年は行っておらず、久しぶりに行って見ると、
移築・復元されてからの長い年月、風雨にさらされてきた建物は風格を増し、
そして町並みはよりリアルなたたずまいになっていたのでした。
園内は3つのゾーンがあり、東ゾーンは昔の商家やお風呂屋さん、
酒屋さんや文具店などが並んでいます。
中央ゾーンは郷土資料の展示コーナーや、2.26事件の舞台となった高橋是清邸など、
歴史的な建物が移築されています。
そして今回の取材のお目当てのひとつがある西ゾーン。
ここにはさまざまな建築様式で建てられた、
大正から昭和初期のモダンな住宅が並んでいます。
中でも私のお気に入りが、前川國男邸です。
前川國男はル・コルビュジェの元で修行したこともあり、
戦後の日本の近代建築をリードした建築家として知られています。
その自邸として、品川区上大崎に1942(昭和17)年に建てられた住宅。
これが典型的な日本のモダニズム建築で、切妻屋根や障子を思わせる格子窓など、
和のテイストを取り入れつつモダンに仕上げてある名建築なのです。
リビングダイニングに書斎と寝室、ごく小さなキッチンというシンプルな作りで、
デザイン的にはまさに今の住宅の主流ともいえるスタイルです。
今から74年も前に、プロトタイプが生まれていたことに驚きます。
さらに、そのコンパクトさとたたずまいは現代なら、
ちょっと余裕のある一般人でも建てられそうな規模です。
著名にして売れっ子の建築家の家とあらば、今ならさぞや豪邸で、
とても庶民に手が届く類のものではないはず。
しかもこの家、この規模で、玄関脇に女中さん用の小部屋があるのです。
今昔の文化や暮らしの違いに思いを馳せてしまいます。
そして、この家の中で前川國男巨匠は、
いったいどういうファッションでくつろいでいたのか?
現代なら、この手の家にいる人はTシャツにジーンズか、
ジャージ素材のパンツでくつろいでいるはず。
前川さんのくつろぎスタイルは和服だろうか?
ドレスシャツにノータイくらいのカジュアルさだろうか?
でも外出時は当然、三つ揃いスーツに革靴、ハット着用とかでしょうか?
などなど思いを馳せていると、もちろん、デザインやサイズの違いはあっても、
基本、74年後の今もほとんどの男性はシャツにスーツ、革靴を履いて仕事に赴く、
ことに気づきます。
変わったのは、家にいる時のくつろぎスタイル。
着るものって、プライベートシーンから変化して行くのだと
今更ながら思いました。
今から74年後、人類は家で何を着てくつろいでいるのでしょうか?
まだ人類は地球にいるのでしょうか?
などなど、昔の日本の家や暮らしを見ていると、
思いはいつの間にか未来を見ていたりするものですね。

*写真は前川國男邸の外観と内観。
リビングには中二階があります。以前は上まで行けたと思うのですが、現在は禁止。
なんと言っても築74年ですから。
家具もすべて建築家のデザイン。ちょうちん型の照明のみイサム・ノグチで、
巨匠コラボです。